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津地方裁判所 昭和61年(わ)49号 判決

主文

被告人を懲役一年六月に処する。

この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、

第一  別所清から賃借した同人所有の三重県久居市北口町字野中一二番三の田及びその西側に隣接する被告人が田中秀文から賃借したものであると主張する同人所有の同所一〇番七の田にゴルフ練習場を建築しようと計画し、昭和五八年六月六日ころから右ゴルフ練習場の建築工事に着工し、右一二番三の田五六三平方メートルのうちの西寄りの部分約五〇〇平方メートル及び同部分に接続する右一〇番七の田六三八平方メートルのうちの東寄りの部分約三七〇平方メートル(以下本件土地という)の範囲にわたつて南北約二〇・七メートル、東西約四二メートルの長方形の区画に高さ約〇・五五メートルの土盛りをし、その周囲の北側、西側及び南側にゴルフ練習用ネツトを張るためのコンクリート製支柱一一本を建てたものであるが、田中秀文の代理人である弁護士飯沼昭典の申立により被告人に対する津地方裁判所昭和五八年(ヨ)第六五号仮処分決定正本に基づき、津地方裁判所執行官柳田隆三が、同年七月一二日本件土地を含む右一〇番七の土地に対する被告人の占有を解いてこれを執行官の占有に移し、右土地上のゴルフ練習場の建築工事の続行を禁止する仮処分の執行をし、同所にその旨記載した公示札を立てていたところ、同月一八日本件土地及び前記一二番三の田において、情を知らない坂倉幸治らをして、前記コンクリート製支柱一一本に北側東西約四二メートル、西側南北約二〇・七メートル、南側東西約四二メートルにわたつて各高さ約一五メートルのゴルフ練習用ネツトを張り巡らし、かつその天井部分の全面を同ネツトで覆う工事を完成させて本件土地を練習場施設として囲い込み、もつて右執行官のなした差押の標示を無効ならしめるとともに同執行官の占有する本件土地を侵奪し、

第二  同年一二月三日午前一〇時五〇分ころ、前同所一〇番二において、被告人が前記田中と口論し同人につかみかかつた際これを制止しようとした右田中の妻ヨシヱ(当時六二歳)に対し、その左腕をつかんで引つ張る等の暴行を加え、よつて同人に加療約一週間を要する左上前腕打撲皮下出血の傷害を負わせ

たものである。

(証拠の標目)(省略)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為のうち封印破棄の点は刑法九六条、罰金等臨時措置法三条一項一号、不動産侵奪の点は刑法二三五条ノ二に、判示第二の所為は同法二〇四条、罰金等臨時措置法三条一項一号にそれぞれ該当するが、判示第一の封印破棄と不動産侵奪とは一個の行為で二個の罪名に触れる場合であるから、刑法五四条一項前段、一〇条により一罪として重い不動産侵奪罪の刑で処断することとし、判示第二の罪について懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年六月に処し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

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